地球とは、異なる次元にある世界 ハーセント





ハーセントには、4つの種族があった。
彼らは、各々が国を持ち、豊かに暮らしている。
各種族の王は、火、水、大地、大気を司る長として
それぞれの国を治めていた。



豊かな水や食料、天候や自然が満ち溢れているのも
世界の調律を図る長がいるからこそだ。





地球よりも幾分小さいこの世界には、貧富の差など無かった。
空には色鮮やかな鳥達が飛び交い、森ではたくさんの動物がエルフと
歌い、踊りながら共に暮らしている。

種をまけば作物をたわわに実らせて、海は青く
澄みわたり大小様々な生き物を、優しく包み込んでいた。






しかしあるときを境に平穏な日々が音を立てて崩れ去ってしまう。
長の張る結界が破られ邪気を持つものが侵入してきたのだ。




それはジェイドと名乗り、ブラックシードという黒水晶を扱う、細身で
長身のブラックシードマスター(禍種の使い手)という術師だった。




長の力もジェイドの圧倒的な力の前では成す術も無く、
捕らえられ封印されてしまった。

支える者がいなくなった世界は刹那に荒れ果て、
ジェイドの側に就く者も現れ始める。
ジェイドらは勢力を増し、世界を反乱の渦へと巻き込んで
自らが支配する帝国を創りあげてしまった。



今宵、帝国 ダークシード がここに誕生した。 




厚い雲の隙間から見える赤い月がさらなる侵略を促しているかのように
辺りを鈍く照らす。
泉の水や、青々と茂っていた木々は枯れ果て、建物は廃墟と化していた。
緑豊かな森も今では不気味な樹海へと姿を変え、
海は怒涛の波を打ち付ける。
風が冷たく打ち付けて、酷いところでは急激な温度変化のために
ばたばたと何人もが力尽きていた。




平和だったハーセントには争いなど数える程しかなく、
それも小競り合い程度のほんの小さなもの。
戦う術など誰も持っていなかった。


死を免れた者たちは、ハーセントに伝わる伝説を糧に身を潜めている。


荒れた世界を救うべく異界より舞い降りられたし、巫女の伝説を。











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